CASE4導入事例
株式会社 壱様

トライアル就労を活用することで、定着率を高めることができました。
株式会社 壱 取締役 有山様
コロナ禍を機に採用活動にも変化が
今年で創業7年を迎える株式会社壱は、BPO(Business Process Outsourcing)サービスを展開するスタートアップ企業。クライアントが抱える課題に沿ってさまざまなサービスを展開するため、業務内容も多岐にわたるのが特徴です。東京都のキャリアチェンジ再就職支援事業を利用して、どのように採用活動を進められているのか、有山取締役にお話を伺いました。

有山取締役「営業戦略の立案から実行までを請け負う営業代行、データ分析やマーケティング戦略をサポートするITコンサルティング、コールセンターの業務代行、オフィスやマンションの清掃業務など、幅広く事業を展開しております。お客様の要望に柔軟にお応えするかたちで、一つずつ業務内容が増えてゆき、最近では看護師に特化した人材紹介の事業もスタートしました。メインとなるコンサルティング業務はスキルや経験を要する仕事ではありますが、社内で育成することを前提に未経験の方にも間口を広げ、採用における母集団形成にもトライしてきました。また、コールセンターや清掃の業務については、働く意欲のある方であれば、年齢を問わず、どなたにも可能性のある仕事だと考えています」
未経験者に間口を広げることで応募が来る時代もあったそうですが、コロナ禍で事情が一変。活動制限により対面でコミュニケーションを取る機会が減り、オンラインによる対応が求められるなど、採用活動にも大きな変化があったといいます。
有山取締役「コロナ禍を機に時代が変わったのを感じますね。求人媒体もハローワークも、いまやオンラインを通じた利用が一般的。気軽にワンクリックで応募できる時代ですから、弊社の求人にも少なからず応募が来ることは来ます。ところが、ご応募いただいたのに電話をしてもメールをしても一向に返事がない方や、面接を設定しても当日いらっしゃらない方もいます。オンライン面接にも対応していますが、働く現場を見ていただきたい思いがあり、一度は対面による面接をお願いしています。実際のところ、オンラインで応募が増えても、面接に至るまでの労力や時間が余計にかかり、採用コストが割高になっているのが現状なのです。その点、この事業では、事務局が求職者をご紹介くださるので、こちらの手間がかからず、とても助かっています」
面談ではわからない人柄や勤務態度も見えてくる
同社では、類似事業も含めて3年前からトライアル就労を利用されてきたそうです。

有山取締役「トライアル就労から正社員となった3名が今も活躍してくれています。求人媒体による雇用に比べると定着率はよいです。未経験者に広く門戸を開いていることもありますが、求人媒体などを利用した一般的な雇用の場合、入社後に『思っていた仕事と違う』『会社の雰囲気と合わない』などの理由から、1〜2ヵ月で離職してしまう人もいて、長期雇用に繋がらないという課題がありました。トライアル就労の場合は、2ヶ月間業務を体験した上で入社していますので、早期離職する人はほとんどいません。採用側は求職者の人柄や勤務態度を知ることができますし、求職者の皆さんも業務内容や職場との相性を判断できるのだと思います」
直近では、オフィス・マンションの清掃業務を担当する社員としてSさんが入社されました。Sさんは長らく事務職としてご経験されてきた50歳代の男性。黙々とできる仕事を希望して、清掃業務の仕事へキャリアチェンジを果たしました。
有山取締役「清掃業務の場合、大規模なオフィスですと複数名で担当しますが、マンションや小規模なオフィスでは一人で担当することが多いですね。集中して黙々と作業をしたい方には向いている仕事だと思います。ただし、単独で担当する仕事に穴は空けられませんので、休む場合は早めに連絡するのはもちろん、欠勤が出た現場があれば率先してフォローするなど、社員には誠実で責任ある対応が求められます。現場ではお客様との円滑な対応も求められますので、トライアル就労では人柄やコミュニケーション力の高さを見させていただき、Sさんを採用させていただきました」

まだ入社して半年にも満たないSさんですが、マンション、オフィスを含めたすべての現場を見守りながら、すでに何人ものスタッフを束ねるマネージャー的な仕事を任せられているそうです。当初は単独での業務を希望されていたSさん。多くの人と関わる現在のワークスタイルに満足されているのでしょうか? エントリーから正社員採用までの伴走を務めた事務局の担当者が伺った話では「日々楽しく働いていて、今の仕事にとても満足しているとお話してくださいました」と、やり甲斐をもって業務にあたられている様子でした。
有山取締役「現場ではお客様からお声をかけていただくこともあり、問題があれば臨機応変、改善に奔走することになります。他にも、スタッフの要望に耳を傾けてコミュニケーションを取るなど、Sさんにはさまざまな役割を担っていただいています。パートやアルバイトを含めてミドル・シニア層のスタッフも多いので、社会経験が豊かなSさんの言葉は受け入れやすいようですね。また、Sさんのお客様への丁寧な対応は、弊社への信頼にも繋がっていると感じます」
Sさんのキャリアチェンジ転職は、社会経験が長いベテラン世代の強みを活かした成功例といえそうです。
トライアル就労をOJTのしくみづくりに活かす
一般的な採用の流れにおいても、本採用の前に能力や適性を評価する試用期間があります。有山取締役は、トライアル就労との違いをどのように感じていらっしゃるのでしょうか。
有山取締役「雇用契約上、弊社では試用期間を2週間とさせていただいています。試用期間とはいいますが、勤務態度に大きな問題がない限り契約終了となることはありません。試すというよりも育成期間としての意味合いが強いように思います。少数精鋭の我が社としては少しでも早く戦力になっていただきたい思いもあり、育成期間としては若干タイトなスケジュールになっているかもしれません。一方、トライアル就労の2ヶ月間は、求職者の方に会社の雰囲気や業務内容を知っていただく期間ですので、ゆとりをもって対応することができます。我々としても、求職者の方の適正や能力をゆっくり見極めることができるメリットは大きいですね」

採用前に適性を確認できるトライアル就労は、雇用側にも求職者側にもメリットのあるシステムといえそうです。さらに、トライアル就労を利用する中で、「社員教育の課題も見えてきた」と、有山取締役。最後にこのようなお言葉をいただきました。
有山取締役「トライアル就労によって求職者の皆さんを受け入れるとなると、2カ月の間に何を体験していただくのか、従来の試用期間とは違ったプランを立てることになります。それをOJT(On-the-Job Training)のしくみづくりにも活かしています。指導役となる社員の負担を考えるとどうしても短めになってしまいがちなのですが、トライアル就労の2カ月という期間は、業務を学ぶのに必要な時間として一つの基準であることに気付きました。大企業のようなゆとりを持った対応はできませんが、早期離職を防ぐためにも、OJTの内容を見直すきっかけにしたいと思っています」
採用側の企業と求職者を繋ぐこの支援事業。ミスマッチを防ぐばかりでなく、スタッフの育成についても新たな風を吹かせてくれたようです。
- 事例紹介/企業プロフィール
- 株式会社 壱
コーポレートサイト:https://i-chi.co.jp/ - 東京都中央区新川1−24−12 SHビル6階
- 事業内容:営業・人材コンサルティング、ITコンサルティング、コールセンター、ビル清掃管理等
- 従業員数:約50名
- 取材撮影:2025年8月