CASE2導入事例 
武蔵野硝子 株式会社 様

武蔵野硝子 株式会社 様

業界ならではの悩み。そこに活路を開いてくれたのがこの支援事業です。

武蔵野硝子 株式会社/代表取締役社長 伊藤様
吉祥寺支店・支店長 天野様
経理 浅野様  業務 伊藤様

求人票では伝えられないもどかしさ

大手住宅建材メーカーの特約店・代理店として創業から60年を迎える武蔵野硝子社は、メーカーと販売店を仲介する仲卸業。建築用板ガラス、アルミサッシなど、幅広い住宅用建材を取り扱い、大きく分けて3つの社内部門がその業務を支えています。

伊藤社長「お客様と接する『営業』、その活動をサポートする『業務(事務)』、販売店さんや小売店さんからの発注に応じて商材をお届けする『配送』の3つが主な職域です。それぞれに採用・人事についての課題が山積でした」

天野支店長「時代性もあるのでしょう。建築業界は社会貢献度が極めて高い分野にも関わらず、〝昔ながらのローカルな文化や商慣習が多いのでは?〟というマイナスイメージもあって、なかなか人材が集まりにくい状況が続いています」

特に営業職は反応が鈍く、求人に対してレスポンスはほぼゼロ。かつてはコロナ禍の影響から対面営業が困難となり、リモート営業を導入した時期もあるといいますが、コロナ禍が明けてからは現場レベルでの打ち合わせや商談が再び増えはじめ、どうしてもお客様とじかに顔を合わせてコミュニケーションを取る必要が出てきました。そこに「忌避感があるのかもしれない」と、お二人は語ります。

伊藤社長「これまで採用はハローワークをメインに進めてきました。ただ、求人票に掲載した内容だけでは、弊社がどういった会社かは伝えきれません。先ほど申し上げた業界ならではといえる誤解も解けないでしょう。弊社の仕事を理解してもらうことができないことに歯がゆさを感じていました。その点、東京都が推進するこの支援事業は、事務局スタッフが事前に私どもの事情を汲み取り、その上で、さまざまな人材を紹介してくださいます。私たちの仕事に興味を持った求職者さんを見つけてきてくれるので助かります」

ここが〝輝ける場所かどうか〟を見定められる「トライアル就労」

トライアル就労とは、労働者派遣制度のしくみを活用し、派遣先企業で実際の業務を体験しながら正社員を目指すという仕組みです。この事業を活用されたさまざまな企業の人事担当者にお話を伺うと、互いの理解が深まることでミスマッチを未然に防ぐことができ、両者にとってウィンウィンな制度だと語ります。伊藤社長はそれらの利点を称えつつ、何よりも職場の雰囲気を確かめられる点こそが最大のメリットではないかと語ってくださいました。

伊藤社長「今は仕事をスマホやPC一つで探せる便利な時代です。でも、その一方で、皆さん大切なことをおざなりにしている気がします。いくら自分に自信があって、企業とのマッチングが成り立ったとしても、その能力を次の職場で100%活かせるとは限りません。そもそも仕事というものは一人ではできませんし、どんなに有能でも仲間の協力は不可欠。目の前の課題に対してチームで取り組むことになります。そうした時に大切になってくるのは人間関係。そして楽しく働くための自分の居場所を作れるかどうかじゃないでしょうか。給与や条件、待遇はもちろん重要ですが、それらをおろそかにしないことが、生きていく上での幸福度を高めることにつながっていくのだと思います」

また、たとえ求職者ご本人が、ご自身の価値や得手不得手を把握していたとしても、もしかしたら別の可能性やポテンシャルを持っているかもしれません。時には思いがけない自分の価値を見出すこともあると伊藤社長は言葉を継ぎます。

伊藤社長「だから私たちは、当社を希望してくれるすべての人のトライアル就労を受け入れています。その上で、この会社に合うか合わないか、または合わせていけるかどうかを判断するのは当人次第。そういった意味でトライアル就労は貴重なプロセスだと思っているんです」

先輩と後輩、両者が切磋琢磨する好循環が生まれました

では、実際にトライアル就労を経て正社員となった浅野さんの例をご紹介しましょう。

今年の夏、トライアル就労期間を終えて正社員になった浅野さんは、将来的に家業を継ぐことがあるかもしれないこともあり「もっと社会経験を積んでおきたい」、特に財務に携わる仕事に就いて「経理業務を学びたい」と考えていました。

浅野さん「経理未経験者でも雇っていただける就職口を探していたところ、ご縁があったのがこの会社でした。大きな組織で働くのは初めての経験。最初は戸惑いもありました。でも皆さん優しく接してくださり、すぐに仲間の輪に加わらせていただくことができました。同世代の友人たちに聞くと、仕事の悩みの大半は職場環境でのストレスだそうです。その点、この会社ではなんの心配も不安もありませんでした」

また、浅野さんに次いで同時期に入社されたのが伊藤さんです。

彼女も異業種からのキャリアチェンジ。前職ではお客様と直接関わる場面はほとんどありませんでしたが、今は事務スタッフとしてお取引先企業からの連絡を受け、多彩な商品の受発注業務をこなしています。

伊藤さん「再就職は初めてでした。未経験のことばかりで、3ヵ月経った今でも新鮮な気持ちで仕事をしています。実は、トライアル就労はこの会社で2度目だったんです。1社目はIT企業でしたが、実際の業務と自分の技量に隔たりを感じていました。トライアル就労は最大で2回まで利用できます。その会社や仕事を見極めるチャンスであると同時に、自分にできること、足りていないことを再認識する機会にもなると思います」

一方、そんな後輩たちを間近で見守ってきたのが、先輩社員の菰田(こもだ)さんでした。彼女も2年前に類似事業でトライアル就労を体験し、同社に正社員採用された人材の一人です。

菰田さん「後輩ができてうれしい反面、最近はもっともっと自分の成長スピードを上げていかないと、と強く思うようになりました。考えてみれば私自身もまだまだ過渡期。いい意味で緊張感を持ちながら日々の仕事に取り組んでいます」

天野支店長曰く、当事業の活用は、菰田さんばかりでなく既存社員の皆さんにも刺激をもたらしているのだとか。これまで新人社員には、商品知識を学ぶためにeラーニングを中心とした研修を施してきたそうですが、その教育手法にも徐々に変化が加えられていきました。

天野支店長「弊社は扱う商材が多岐にわたるため、まずは多様な商品知識を学ぶことが仕事の土台になります。でも、やっぱり地道な作業なので集中力が続きません。そこで、午前中はそういった勉強とともに、ショールーム見学など、現場の空気に触れてもらうプログラムを設けました。また午後は、先輩社員と密にコミュニケーションをとりながら実務に沿った実践的な研修を行なうようにしました。これが仕事を教える立場にある先輩社員たちの成長にもつながっているんです。社員たちが切磋琢磨できる環境が生まれ、いい循環ができつつあります」

こうして若手が入ってくれることで、社内に新しい風が吹くきっかけになれば……。伊藤社長と天野支店長は、この支援事業にさらなる期待を寄せていらっしゃいます。

事例紹介/企業プロフィール
武蔵野硝子 株式会社
コーポレートサイト http://www.musashino-glass.co.jp/
東京都武蔵野市吉祥寺北町1丁目24-1
事業内容:住宅関連資材の卸販売およびフロント・エクステリア・太陽光発電システムの施工など
従業員数:約45名
取材撮影:2024年10月