CASE1導入事例
株式会社 東進様
いいことずくめのこの制度は、人材不足に悩む業界を活性化してくれるものと信じています。
株式会社 東進/労務部長 上野様
営業部長 山本様
営業アシスタント 由利様
ものづくりの世界ゆえの、人事採用における悩みとは
東京、大阪、愛媛(今治市)、中国(山東省青島)を主な拠点に、タオルの製造卸、販売を手掛けているのが株式会社東進です。東京都が提供するこの就労支援制度を知ったきっかけは、知人からのご紹介だったのだとか。労務部を統括する上野部長にお話を伺うと、この業界ならではといえる人事採用に関する悩みや課題を打ち明けてくださいました。
上野部長「タオル業界はものづくりの世界。現場は経験豊富なこだわりを持った従業員が多い。また、決して華やかな業種ではないためか、若い方からの反応はどうしても芳しくありませんでした。これまで、泉州タオルの発祥地である大阪本社では事務や加工・出荷に携わる人材を募り、同じく今治タオルで有名な愛媛の自社工場では製造を担う職人さんが主、東京では営業職に関わるスタッフをリクルーティングしてきました。近年は企業からオファーでオリジナルタオルを製造する業務が多く、上質でデザイン性の高い自社ブランド商品もECサイトで販売しています。私たちは自らの仕事に誇りを持って取り組んでいますが、そのやり甲斐や醍醐味はなかなか伝わりません。ハローワークや大手転職サイトの広告などでは思うように人が集まらないのが実情でした」
そんな時、上野部長の目に留まったのが、キャリアチェンジ再就職支援事業でした。事務局スタッフから迅速かつ安定した求職者の紹介が得られ、トライアル就労を通してミスマッチを防げるこの事業。過去、既に類似事業で1名の採用実績があるため、当事業にも躊躇うことなくお申し込みをされたといいます。
上野部長「今回は類似事業で採用した営業アシスタントが、出産のため産前産後休暇に入るというタイミングでした。 〝とにかく人手が足りない〟という状況にあったため、新たなアシスタントの補充が急務だったのです。
通常の求人媒体は募集要項を上位に表示させるなど、興味を持ってもらうための仕掛けを施すだけでも相応のコストを要します。その点、この事業にはお互いが距離感を測りながら適性を見極めていける〝トライアル就労〟という仕組みが設けられ、しかもその間の給与や交通費(上限あり)といった費用は都が全額カバーしてくれます。 これは私たちにとって大変ありがたいことです。もちろん、キャリアチェンジを支援するという趣旨にも大いに賛同できましたし、私たちの業界は異業種からの挑戦は大歓迎です」
事務局・担当者に対する安心感。そして期待以上の成果に大満足
営業部門のトップを務める山本部長にとって、新人社員の採用に関して不安に思う点もあったのではないでしょうか。
山本部長「どんな求人媒体であれ、普通は採用が決定したらそこで終わりというケースが多いのですが、この事業はアフターケアも万全です。前回の採用でそのことはわかりましたので、不安はさほどありませんでした。特に事務局・担当者の存在が大きかったですね。求職者の皆さんの情報のみならず、事前に世間の動向や客観的な採用情報を提供してくださり、会社見学やトライアル就労の期間中にも細やかな心配りが感じられました。まさに伴走者。弊社の事情や状況を理解してくださっていることが信頼感の醸成につながり、『この方のご紹介なら間違いはない』という安心感に変わっていったのです」
やがて正社員候補としてマッチングされたのが由利さんでした。前職はエステティシャン。事務職や営業サポート職はまったくの未経験でしたが、ご本人は「不思議と不安はなかった」と往時を振り返ります。
由利さん「先輩たちは皆さん優しくて。1を聞くと10教えてくれる方々ばかりだったので、職場に馴染むのは早かったですね。また、私と同様にトライアル就労を経て入社された前任の先輩が丁寧に指導してくださったことも心強かったです。私がトライアル就労を始めた頃、先輩はきっと定期的な通院や検診、産前の準備などで慌ただしかったはずです。にも関わらず、週に3日〜4日ほどはリモートでわからないことを教えていただき、常に私の立場に寄り添ってくださいました。当初、未経験の職域で働くことに戸惑いもありましたが、自然体でトライアルに臨むことができました」
もともとエステティシャンとして働いていた由利さんにとって、お客様からの電話対応は得意とするところです。この仕事に求められるのはコミュニケーション能力とスピード感。前職が接客業であるということで上野部長は安心していたそうですが、直属の上司にあたる山本部長は「由利さんの大活躍は期待以上だった」と目を輝かせます。
山本部長「彼女は誰よりも電話に出るのが早いんです。お相手を待たせず、ワンコールで受話器を取るというのは、営業に携わる者のマインドとして大切なことです。また、これは当業界における今後の課題でもあるのですが、相変わらずファクシミリでの帳票連絡が文化として残っています。お取引先や製造現場とのコミュニケーションでは今なお欠かせないツールなんですね。そういった特異な環境にも難なくフィットし、今では彼女が自主的に動いて、私がフォローアップするまでもなく業務が完結していることだってあるんですよ」
前職ではパソコンを扱う機会こそ少なかったものの、職場の先輩たちのアドバイスや、この事業でトライアル就労を始めた求職者が無料で活用可能な「e-ラーニング」機能を駆使して、仕事に必要とされるさまざまなPCスキルを磨いていったという由利さん。前任の先輩社員と二人三脚で3カ月ほどを過ごし、今ではすっかり〝会社にとって欠かせない存在〟となっているようです。
由利さん「この事業は、自分でイチから調べるより、事務局の頼れるプロフェッショナルに助けていただいて、いい就職先を探せるという点が何よりもオススメなポイントです。特に働きながら再就職先を探していらっしゃる皆さんには嬉しい制度ではないでしょうか」 今や仕事探しは、信頼できるエージェントとともに歩むのがスタンダード。事務局スタッフの細やかなナビゲーションが、由利さんの背中を押しました。
ちなみに、由利さんの指導役にあたられた先輩は、1年後に復帰されるご予定なのだとか。理想的な〝トライアルリレー〟によって円滑な業務の引き継ぎをされたお二人が、同じ職場で肩を並べて働く日もそう遠い未来の話ではなさそうです。制度活用によって得られた、副次的な効果とメリット
ジャストな人材採用を叶えられたこちらの企業では、今回のトライアル就労にあたって、事前にどのようなご準備をされていたのかをお尋ねしたところ、上野部長からはこんな答えが返ってきました。
上野部長「トライアル就労の皆さんに対しては、従来通り接し方は変えていません。むしろ注力したのは、私たち受け容れる側の〝意識改革〟です。現在は売り手市場なうえに企業モラルが重視される時代です。パワハラ、モラハラなどがあっては言語道断。一度教えてもしっかり理解ができていなければ、それは教える側に非があります。叱るのではなく、再び丁寧に教える。そういった基本的なことを既存社員に周知しました。いかに若い人たちが働きやすい職場を創りあげるか、採用者の成長を促す環境づくりを行えるか。自分たちが時代に合わせて変わっていくことに努めました」
「優れた人材を安定して紹介してくれること」、「ミスマッチを防げるトライアル就労が用意されていること」、「採用コストを抑えられること」。上野部長と山本部長の両氏は、当事業のメリットをいくつも挙げてくださいましたが、その上で時代の趨勢に合わせた組織づくりにも当事業が大きく貢献したのだとか。求職者の皆さんにとって「よい会社」を目指し、これからもさまざまな創意工夫を続けていくと語ってくださいました。
- 事例紹介/企業プロフィール
- 株式会社 東進
- コーポレートサイト https://toshin-towel.co.jp/
- 東京都中央区日本橋本町2丁目6-1 日本橋本町プラザビル6階
- 事業内容:タオル製品の卸・販売・企画・製造
- 従業員数:約50名
- 取材撮影:2024年10月