【セミナーレポート】当たり前にデジタルスキルが求められる“今”。
これからのキャリアチェンジのポイントとは?

業務のデジタル化に合わせたキャリアチェンジで正社員を目指せる方法とは

講師:滝澤理砂氏/キャリアコンサルタント

2024年11月12日、滝澤理砂さんを講師にお迎えしオンラインセミナーの第2弾が実施されました。テーマは「デジタル時代におけるキャリアチェンジ」。滝澤さんが語ってくださったのは、先入観を取り払い、視野を広げて選択肢を増やすことについて。たとえデジタルスキルに自信がなくても、「自分の強みを見つけて仕事に活かすことはできる」「リスキリングで不安を払拭する」など、勇気をもらえる話題が展開されました。

1. そもそも「デジタルスキル」って何?

「これからの時代はデジタルスキルが必須」、「経験がないから新しい仕事にチャレンジができない」といった漠然とした不安を抱え、ご自身のキャリアプランに蓋をしてしまっている方も多いのではないでしょうか?

そもそもデジタルスキルとは、業務の効率化や生産性の向上を目的に、さまざまなデジタル技術を使いこなす能力です。つまり、必要に応じたスキルを習得すれば仕事が円滑に進められるということ。

まずは、デジタル化によって私たちの暮らしや働き方がどのように変わりつつあるかをおさらいしてみましょう。

ますます便利になる私たちの生活

デジタル庁によれば、「今後、目指すべきデジタル社会」とは、「デジタルの活用によって一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」と定義されています。

デジタル化は人々の暮らしに深く浸透しています。お買物はオンラインショッピング。自動翻訳を活用すれば外国人とのコミュニケーションも容易にでき、インターネットを介した在宅ワークもポピュラーになりました。しかし、その一方で、対面販売を軸とする小売店の淘汰、書店やCDショップ、オフィス(不動産業界)、交通機関の活用減少などが生じています。生活様式の変化によって雇用に影響が出ていることも押さえておかなければなりません。

デジタル化が進む業務の現場

デジタル化の波は、私たちが働く職場にも大きな変革をもたらしています。データ入力や処理など、正確性やスピードが求められる作業はITに置き換えられ、言語・画像・音声の認識や処理には生成AIが活用されるように。単純作業や反復作業、力仕事や危険な作業も自律型ロボットの登場と進化で随分と様変わりしています。

今後、ITやAI、ロボットが活躍しやすいとされている仕事は、一般事務、受付、銀行の窓口業務、ショップのレジ、レストランでの調理・配膳、運転・配達と多岐にわたり、その進化にともなって人の働き方にも変化が訪れるといわれています。


※東京ハローワーク 職業別有効求人・求職状況(一般常用)≪令和6年度8月 取扱状況≫

ちなみにこちらの図は、ハローワークが発表している職業別有効求人倍率の表です。専門性の高い技術者や、保安職業従事者、サービス職業従事者、介護士をはじめとする福祉関連の仕事が伸びているのに対して、事務職の求人は狭き門となっているのがわかります。

今こそ考え方をシフトしよう

一説に「日本の労働人口の49%が将来自動化される」という予測が立てられています。AIやロボットが人に取って代わり、やがてさまざまな仕事が自動化されていくということです。

もちろん、いたずらに恐れる必要はありませんが、時代の変化を止めることができないのもまた事実。滝澤さんは「デジタルは苦手」、「スキルも経験もないから無理」とはいっていられない状況があると語ります。そこで、就職・転職を考える場合は凝り固まった考えや苦手意識をポジティブ方向にシフトする必要があります。「外部環境の変化を受け入れる」、「自分自身と向き合い、能力や価値観を客観視し、今後の方向性を見出す」、そして何より「チャレンジしてみる!」、「行動してみる!」という積極性と柔軟性が求められます。

2. デジタル時代におけるキャリアチェンジのポイント

デジタルスキルを要する職種は、IT分野にとどまりません。最近はメールや文書作成など、あらゆる職場でパソコンの活用が当たり前になってきました。また、こうした一般的なPCスキルに加え、AI技術やクラウドサービス、サイバーセキュリティに対する知識・リテラシーなど、特定の職種ごとに必要とされる専門スキルもあります。

デジタル時代だからこそ必要なスキル・能力とは?

例えば、事務職や営業職も、各種デジタルツールを駆使した定型業務の効率化が図られ、データを管理・分析し、それらを活用しながら戦略や予測を立てる必要にも迫られています。また、工場や建設現場でもデジタル機器の操作が不可欠。AI活用やロボットに指示を出すという場面もあるでしょう。さらに、介護の現場でも、介護記録のペーパーレス化や介護ロボットとの協業など、デジタル化が進んでいます。どんな職種であれ、「これまでの経験」を「そのまま」活かすことは難しくなっています。

滝澤さんは「同じ職種でも、職場によって求められる仕事内容やスキルは変わってきている」、「あらゆる仕事でより高いデジタルスキルを身につけることが重要である」と語ります。つまり、この時代にフィットした「意識や行動の変容」が必要ということではないでしょうか。

デジタル以外にも必要なスキルがある?

いかにデジタル時代といえど「人間でなければできない領域」があります。それは「予測不可能な問題に対する柔軟な解決能力」、「新しいことを作り出す創造性」、「共感力やコミュニケーション力」、「ホスピタリティ」などを必要とする領域です。

前回のオンラインセミナーで滝澤さんが教えてくださったものに、情報収集力、状況判断力、理解力、企画提案力といった「汎用スキル」があり、誰もが個性として携えている「人柄・価値観・意欲」も強みになるというお話がありました。こうした業種・職種が変わっても活かせるスキルを「ポータブルスキル」と呼びます。滝澤さんは、デジタルスキルを身につけていくと同時に、このポータブルスキルを意識して高めることが大事だといいます。

2022年5月、経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」では、「現在は『注意深さ・ミスがないこと』、『責任感・まじめさ』が重視されるが、将来は『問題発見力』、『的確な予測』、『革新性』が一層求められる」と指摘されています。前述したデジタルツールやAI活用は、人為的ミスを減らし、業務効率化に貢献していますが、結局はそれを活かし、判断を下すのは人の仕事です。ここにも苦手意識を克服するヒントが隠されています。

3. キャリアチェンジに向けて、その解決策とは

先入観を解き放て!

AIやロボットに置き換わるといわれる仕事でも、人が活躍できる場面は確実にあります。コールセンターならお客様からのリクエストを汲み取る力が求められ、接客や販売なら状況に合わせた細やかな対応やホスピタリティがよりよいコミュニケーションにつながります。

一方、デジタルスキルに対する苦手意識や経験がないという不安は、リスキリングによって克服したり、自身の強みを伸ばしたりすることで払拭していけるでしょう。未経験の仕事に就くと収入が下がるというネガティブ思考も、正社員になればトータルで安定すると考えればポジティブに捉えることができそうですね。

また、往々にして「苦手だと思い込んでいたが、やってみたら意外とできた!」ということがあります。それは、皆さんが生まれ持っている先天的な「資質」、努力して身につけた後天的な「スキル」とともに、仕事に役立てられる「潜在能力」です。この力は、新たな物事にチャレンジしたり、新しい環境に身を置くことで引き出されたりするケースが多いようです。先入観と固定観念を開放し、何事にも果敢にトライしてみる心意気を持つことが大切です。

3ステップで、自分らしいキャリアチェンジを目指そう

キャリアチェンジを成功させたい。そう願うのなら、以下の3ステップを実践してみませんか?

まずは「より深く自分を知る」こと。自分自身を客観的に見るのはなかなか難しいものですが、キャリアカウンセラーに相談してみるのも一つの手です。思いもよらない強みが発掘できれば、きっと前向きな気持ちになれるでしょう。

次に重要なのが「リスキリング」です。自分が将来飛び込んでみたい業界や職種で必要と思われるスキル。これを学び直す機会を作ることが大切です。知識の習得のみならず、その過程で得られた自信こそが、キャリアチェンジの道を拓く大きな助けとなります。

そして、キャリアチェンジ再就職支援事業のメリットである「トライアル就労」を活用することも挙げられます。実際にその職場で働いて試してみる。自分に合っているかを見極める。現場を体験すれば、そこで働く自分をイメージでき、自分の持ち味や自分にとって足りないものは何かを再認識することもできます。

ぜひ皆さんも、自分らしいキャリアチェンジプランを立て、この事業で正社員を目指しましょう。