講師:滝澤理砂氏/キャリアコンサルタント
2024年10月10日に開催されたオンラインセミナーでは、キャリアコンサルタントや講師として20年以上活躍される滝澤理砂さんが、キャリアチェンジの成功の鍵となるポイントを紹介してくださいました。幾多の転職をされたご自身の経験を踏まえて語られる「自分に合った仕事の見つけ方」は、目から鱗のアドバイスばかりでした。
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キャリアチェンジを試みる際、「それまでの経験を活かすにはどうしたらいいか」、「自分は何に向いているのかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。長年キャリアコンサルタントとして活躍してきた滝澤さんから、考え方次第で業種・職種選択の幅が広がるアドバイスをいただきました。
例えば、「食品メーカー(業種)」で「営業事務(職種)」の仕事をしてきた方がキャリアチェンジをする場合の例を考えてみます。
まずは、「営業事務」という職種を活かす場合、数字を扱うことが好きだったり、几帳面で細かい間違いを見つけられたりするなら、経理という仕事の適性があるかもしれません。PC業務が得意なら、IT関連の仕事を探してみるということも考えられます。電話応対で相手の気持ちを汲んだ受け答えができるなら、テレフォンオペレーターという選択肢も。あるいは、商品に興味があり、その魅力を伝えたいなら、商品開発やマーケティング、広報宣伝もいいかもしれません。さらに営業社員のサポートにやり甲斐を感じていたら、秘書という仕事も。多くの人と関わる顧客対応をしてきたなら、総務人事や、対人支援、接客販売や、自分自身が営業職に就いてみるという考え方もあるでしょう。これまで担当した業務で、自分はどこが好きだったか、何が得意だったかを見極めていくことで、職種選択の可能性はこんなにも大きく広がります。
また、「食品メーカー」という業種を活かす方法もあります。製造業である「ものづくり」で共通する、日用品、玩具、文房具、繊維、アパレルなどは、商材が食品から物に変わるだけで、今まで培った経験が活かせるかもしれません。また、「食」を活かした別の業界という見方もできます。飲食業、卸売、小売業、商社、農業などが食に関わる業種例に挙げられます。
このように視野を広げることで、意外にも自分の経験や強みを活かせそうな仕事が豊富にあることがわかってきます。
ところで、現在日本には業種や職種がどれだけあるかご存じですか? 総務省の標準産業分類によると、業種は大分類が20、中分類が99、小分類が536もあります。また、厚生労働省の職業分類によると、職種の大分類が15、中分類が99、小分類が440です。では、このような莫大な数の中から自分に合った仕事を見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。それまでの経験から導き出せるヒントの見つけ方をご説明いただきました。
例えば、これまで経験してきた「食品メーカー」を「食に関わる業界」と捉え、視野を拡大していくと、「食」→「身近な暮らしに関わる、人の生活に欠かせない」という視点、そして「人に喜んでもらえる、人の命と健康を守る」という視点へと広げることができます。
視野を拡大することで、経験を活かせる仕事がさらに広がりを見せることがわかります。多様な選択肢の中から自分に合った仕事を見つけるには「まずは自分をよく知ることが大切」だと滝澤さんは語ります。
自分の「興味」、「価値観」、「強み」を知ることで、今後のキャリアの方向性が見えてきます。「興味」があれば、よりモチベーションを高く維持しながら仕事をできます。今の興味だけでなく、昔好きだったことを思い出して、あらためてチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
「価値観」は自分が大切にしたいこと。長続きするかどうかに大きく関わってきます。やりたいことを求め好きな仕事に就く。または仕事も大事だけれどワークライフバランスも考えたいなど、今後自分はどうしたいかも想像しましょう。
そして自分に何ができるかという「強み」。これにはいろいろな種類がありますが、仕事で培ってきた能力の「専門スキル」のほか、性格的な特徴である、好奇心旺盛、積極的、慎重なども強みになります。
また、お仕事をしていなかった期間(いわゆるブランク)が長いと不利なのではと心配される方もいますが、その間に仕事以外で得た活動や経験も強みになります。
企業の人事担当に成り代わって面接代行業務を数々経験してきた滝澤さん。まずは書類を吟味して面接に臨みますが、個性が見えないことが多いのだとか。そこで、書類作成や面接の際に注意したいポイントを教えていただきました。
職務経歴書に、「受注・発注、見積書作成、顧客対応」のような仕事内容を羅列するだけでは、その人ならではの強みや個性が見えません。「何の仕事をしてきたか」という名詞的な表現だけでなく、「どのようにしてきたか」という動詞的な表現を付け加えることが大切です。
例えば、「迅速な処理を心がけ、期日を守る」「丁寧で見やすい書類作成を意識」「スキルアップのために積極的に勉強会に参加した」など、自分ならではの個性を出すことで、違う職種でもキャリアチェンジの可能性が出てくるかもしれません。書類作成や面接の際にこれらを意識しておきましょう。
強みの種類には、「専門スキル」と「汎用スキル」があり、さらに「人柄・価値観・意欲」も強みになります。
「専門スキル」は過去に業務で培ってきた、特定の分野における知識や技術を指します。仕事上では専門スキルは重要ですが、大きいキャリアチェンジをする場合、ご自身をより効果的にアピールするために、他の仕事でも汎用的に使える「汎用スキル」を見つけるのがポイントです。
例えば、情報収集力、状況判断力、理解力、企画・提案力などは様々な職種で活かせます。「人柄・価値観・意欲」は、前向き、責任感が強い、向上心があるなどがあります。これらは面接において「自社の方針や社風に合うか?周りの人とうまくやっていけるか?意欲はあるのか?」という視点で重視される傾向があります。
ただし、自身をよく見せようと、型にはまったやり方で採用されたとしても、入社後にミスマッチだったと気づかされる場合があります。自分が仕事を進めていく上で大事にしたいことと、企業の理念や方向性があっているかどうかも重要です。
業種・職種が変わっても活かすことができるスキルが「汎用スキル」と「人柄・価値観・意欲」。これらを合わせて「ポータブルスキル」と言い、自分ならではの強みを伝えることにも有効です。ぜひご自身のポータブルスキルを意識してみてください。
※ポータブルとは「持ち運べる」という意味
また、自分の強みが見つけられず、短所や弱みならたくさん思いつくという方は、それらを書き出して見方を変えてみてください。実はすべての短所が長所や強みに変わるのです。
例えば「飽きっぽくて長続きしない」は「好奇心旺盛、決断力、行動力がある」という捉え方ができ、「心配性で先のことが気になる」は「先を考えられる想像力が豊かでリスク回避ができる」と変換できるのです。これを「ポジティブ・リフレーミング」といいます。短所や弱みを克服しようとする努力は必要ですが、実は長所も短所も根っこは同じ。「自分の根っこ=自分らしさ」を把握して、それが長所として発揮できる場所を見つけましょう。
もう一つ大切なのは潜在能力です。これはまだ表に現れていない能力を指し、新しいことにチャレンジしてみることで引き出せます。苦手だと思っていたことも、やってみたら意外と向いていることがあるかもしれません。
心理学者のジョン・D・クランボルツが発表した「計画的偶発性理論」の中に、「人生の進路の80%は偶然によって決まる」という一節があります。好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心を持って、いい偶然に出会う。それが起こるように自分から積極的に働きかけてみるということも大切です。「私自身がキャリアコンサルタントになったのも偶然。この仕事を目指していたわけではなく、キャリアに迷っていろいろと行動しているうちにたどり着きました。そして講師の仕事をすることになったのも偶然で、個人的な事情からフルタイムで働けなくなった時に、短時間でもできる講師の仕事を勧められ、とりあえずやってみようと始めてみたところ、楽しくなったのです」と滝澤さんは語ります。
枠にとらわれず、視野を広げ、自身をよく知ること。そして、好奇心を持ってトライしてみることが〝理想の仕事を見つけること〟に繋がると教わったセミナーでした。まずは、勇気を出して一歩踏み出してみませんか。
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