CASE3導入事例
中央精機株式会社様

トライアル就労は、これ以上にない出会いを実現してくれました。
中央精機株式会社/取締役会長 新川様
中央精機株式会社/総務管理本部 総務人事部 課長 佐藤様
中央精機株式会社/経理部 齋藤様
社会を支える高度な技術でありながら、多くの課題を抱えていた採用事情
1955年(昭和30年)に設立、今年で創業から70周年の区切りを迎えたのが中央精機株式会社。同社は、工作顕微鏡ツールスコープの開発・設計・製品化を行うモノづくり企業としてスタート。国内外で初めてホログラフィ・カメラの試作品を完成させ、ステージユニットと呼ばれる高精度な位置決めを可能にする光学機器機構を生み出してきました。これらの先駆的装置の数々は、さまざまな分野で応用され、例えばホログラム技術は紙幣の偽造防止に活用されたり、オートフォーカス顕微鏡は液晶テレビのモニターに生じるわずかな歪みを検出する測定機器に組み込まれたりしています。
業界では知らない人はいないほどの老舗企業。しかし、扱う商材の専門性が高く、耳馴染みの薄い分野だけに、技術者をはじめとする従業員の確保は難しく、時代の流れも大きく影響し、採用には幾つもの壁が立ちはだかったと、総務管理本部長を兼務されている新川会長はおっしゃていました。

新川会長「近年は少子化の問題が顕著に現れ、あらかじめ設けた採用枠に対して採用者が定員に満たない年が続きました。また、営業などの職域は、それなりに経験があって、工業業界や当社の商材に興味がある人を選抜採用していましたが、仮にハローワークや一般的な求人募集媒体で、ようやく面接まで漕ぎ着けても、なかなかマッチングにまでは至らないことも多かったですね。自社のホームページに採用欄を設けても、レスポンスが思うように伸びません。そんな時に入った1本の電話が、キャリアチェンジ再就職支援事業の事務局からのお誘いでした」
必要な人材をピンポイントで探してもらえる期待感
新川会長「最初は、求職者の皆さんが派遣社員として働くという部分にイメージが湧きませんでした。しかし、事業の内容を詳しく伺うと、求職者と採用側ともどもにメリットがある〝トライアル就労〟なら活用できる。そして、支援してくださるのは東京都。実はそのあと、たまたま眺めていたYouTubeで、この支援事業のネットCMを視る機会がありましてね。これならばと、さっそく申し込みをさせてもらいました」

実際に人事部門を担う佐藤さんもまた、新川会長同様、採用や人材育成に危機感を募らせていたお一人。この事業に接して抱いた期待感を語っていただきました。
佐藤さん「総務や経理といった一般職の場合、異業種からチャレンジされる未経験者の方々でも大歓迎です。でも、通常の転職サイトや求人メディアで〝経験不問〟とハードルを下げてしまうと、応募数は確かに伸びるのですが、その中から個人の適性や得意分野を見極め、書類選考を行うのもひと苦労です。その点、この事業は、事務局の方が、私たちと伴走してくださり、当社の事情や採用条件に真摯に耳を傾けてくださる点にも好感が持てました。結果、数名にトライアル就労を体験してもらい、現在3名の方々を正社員として迎えています」
面接を経て採用が決まれば、通常はそのまま従業員として働き始めるのが一般的です。試用期間があるものの、企業側はともに働いていける人物かどうかの判断が不十分なまま、採用された側もせっかく採用されたのだからと言いたいことを引っ込めてしまったまま、良くも悪くも物事が進み、やがて後々のミスマッチを招いてしまいます。
新川会長「2ヶ月間にわたって、会社のいいところ、悪いところをくまなく見てもらい、我々も人となりをじっくりと拝見させてもらう。お互いによいことしかありませんね」
佐藤さん「これまでの通常採用では、試用期間後にお互いの意志を確認し合うことはほとんどありませんでした。一方、トライアル就労は2ヶ月というリミットが区切られ、そこで両者の求めるものやお互いの評価、今後仕事を続けていく上での希望や展望を話し合えます。また、事務局が間に立ってくださることで、トライアル就労中のスタッフが言いづらかったことも伝わってきますし、私たちも本音が言えます。会長の言葉通り、メリットしかありません」
「こんなはずじゃなかった」が互いに避けられたトライアル就労
さて、トライアル就労を体験し、晴れて正社員として本採用となった齋藤さんにもお話を伺ってみましょう。

齋藤さん「前の会社を退職してフリーランスとして仕事を始めたのですが、意外と数字を扱う作業が自分には合っているなと感じたんです。そのうち、できることなら個人事業主の範疇を超え、もっと規模の大きい企業で学びを得たいと思うようになりました。ほぼまったくの異業種からの転身でしたが、何かを作っていくという過程はつぶさに見てきたつもりです。そういった前職の経験を活かしながら、トライアル就労期間を過ごすことができたと思っています」
聞けば、齋藤さんがトライアル就労を始めたのは、同社にとって決算間近の繁忙期。いつにも増して忙しい日々が続くさなかにあって、人事担当の佐藤さんは、齋藤さんのことが気がかりで仕方がなかったと語ります。
佐藤さん「トライアル就労の2ヶ月の間、齋藤さんには『大丈夫?』『負担を感じていない?』と何度も尋ねました(笑)。ところが彼は、頼もしいことに、いつも来たボールをことごとく投げ返してくれ、淡々と自然体で飄々と仕事をこなしていました。返ってくる答えは『任せてください』の一言。そういった日々のコミュニケーションを通しても、彼の仕事に対する生真面目さや向上心が窺えました。トライアル就労では、派遣法で定められる適用除外業務の縛りもありますが、それを補って余りあるメリットがたくさんあると感じました」
また、正社員登用が叶った今、齋藤さんは福島や栃木にある工場への視察出張を予定されているようです。これは、各事業所から送られてくる会計資料や伝票類に目を通す際、電話やメールでのやり取りだけではわからない現場の雰囲気を肌で感じ取るための試み。齋藤さんご本人からの強い希望で実現したものです。
齋藤さん「現場の皆さんの仕事ぶりを見学させていただくことで、一つひとつの数字の裏側が見えてくると思うんです。また、実際に対面してお話をお聞きすることで信頼関係を築きたいという考えもありました。経理部からの要望が一方的なものではなく、現場の皆さんが抱える諸事情を鑑みた上でのお願いになればと思っています」
各部門から届く帳票の中身が見えてくると、それは財務管理や経営企画にも繋がっていきます。持ち前の積極性を武器に、果敢にチャレンジを続けようとされている齋藤さんへ、新川会長と佐藤さんはやさしい眼差しを向けられていらっしゃいました。

- 事例紹介/企業プロフィール
- 中央精機株式会社
- コーポレートサイト https://www.chuo.co.jp
- 東京都千代田区神田淡路町1-5 及川ビル2階
- 事業内容:精密位置決めユニット、光学機械器具の製造および販売
- 従業員数:約98名
- 取材撮影:2025年8月